杉野博美製紙所1

杉野博美製紙所
杉野博美さん

やわらかく温かみのある手すき和紙をつくり続ける

奉書紙と檀紙で全国シェア1位を誇る

石鎚山がどこよりもきれいに見える場所と言われる道前(どうぜん)地方では、約200年前の江戸時代から和紙づくりが盛んに行われ、周桑(しゅうそう)和紙と呼ばれる手すき和紙がつくられてきました。最盛期には国安地区と石田地区で、120軒ほどの紙すき場があったとされています。

「国安には高縄山系のきれいな水が自噴していて、和紙の原料となる楮(こうぞ)を水にさらす、共同のさらし場などもありました。私が子どもの頃は、この近辺に紙すき場がたくさんあり、至るところで紙を板に張り、天日干ししている光景を見ることができました」

そう話すのは国安で「杉野博美製紙所」を営む杉野博美さん。現在では紙すき場は数軒に減ってしまいましたが、この地域でつくられている和紙の種類である奉書紙(ほうしょがみ)と檀紙(だんし)は、全国シェア1位を誇っています。

杉野博美製紙所2

手すき和紙は、癒しを与えることができる紙

周桑和紙は昔ながらの流しすきでつくられます。水の中にほぐした繊維や楮などの材料を入れ、すけたという道具ですくって、動かしながら紙をすきます。

「紙をすくときに表面をなめらかにして、同じ厚さに仕上げることが一番難しい。何年修業をしても思うような紙はなかなかつくれません。いつまでも修業が続く仕事です」(杉野さん)

すき上げた紙は、積み重ね圧縮して水分を切った後、一枚ずつはがして乾燥させます。すべて手作業のため、大変な時間と手間がかかるのです。

「手すき和紙はやわらかな手触りを持ちながら、強靭さもあります。独特の温かみや風合いがあり、人に癒しを与えることができる紙だと思います」(杉野さん)

完成した和紙は、主に祝儀袋やポチ袋、封筒などに加工され、全国の有名百貨店などに並びます。

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和紙の特徴を活かした、新しい使い方を模索

奉書紙は真っ白でふっくらとした上品な紙肌が特徴。包装紙や和菓子の掛紙、木版画用紙などに使われます。檀紙はちりめん状のしわがある厚手で上質な和紙で、金封やポチ袋などに使われます。

「昔と比べると生活習慣の変化などで、奉書紙や檀紙が使われる機会は減少しつつあります。周桑和紙の職人たちも、新しい使い方を考えていかなければと思っているところです。地元でもいろいろな研究をしてくれる方がいて、周桑和紙を使った行灯をつくってくれたり、バッグ製作の素材として使いたいと提案を受けたりすることもあります」(杉野さん)

温かみのある風合いだけではなく、丈夫で長持ちするという和紙は、まだ発見されていない使い方や未知の可能性を秘めているように感じられます。

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和紙づくりを若い世代に引き継いでいきたい

ご実家が明治20年頃から紙すきを営んでおり、物心ついた頃から和紙に囲まれた環境で育ったという杉野さん。一時は途絶えていた家業を引き継いでから、30年以上が過ぎました。現在は若いスタッフも入り、5人体制で和紙の生産に取り組んでいます。

「品質の良い奉書紙と檀紙をつくり、安定してお客さまに提供し続けることが目標。現状をなんとか維持し、将来的には若い人にバトンタッチしていければいいなと思っています。今、うちは和紙づくりに興味があると言って、入ってきた若いスタッフがいるので頼もしいです。もうあと1人か2人くらい若い人が来てくれたらいいなと感じています」(杉野さん)

杉野博美製紙所5

杉野博美製紙所
愛媛県西条市国安748
☎ 0898-66-1585